実証研究報告

第3回『みらい授業フォーラム』セミナー開催のご報告①

2022年09月22日
2022年7月23日、『みらい授業フォーラム』の第3回セミナーを開催いたしました。講師に 高橋 純 先生(東京学芸大学教授)と 加固 希支男 先生(東京学芸大学附属小金井小学校教諭)をお迎えして、貴重なお話をたまわりました。
ご参加の皆様、ご支援いただきました方々のおかげをもちまして、盛況のうちに終了することができました。この場を借りて御礼申し上げます。
今回のご講演では、最近注目される「個別最適な学び」について、一斉授業との関係やICT活用の視点などを交えながら具体的にお示しいただきました。以下、ご講演の概要をご報告いたします。


 

演題:『「個別最適な学び」ってなに?』
~ 一斉授業 × 個別学習 × ICT ~

加固 希支男 先生
(東京学芸大学附属小金井小学校教諭)
高橋 純 先生
(東京学芸大学教授)

 

 

1.「個別最適な学び」は、いままでと何がちがうのか

「個別最適な学び」とは

「個別最適な学び」には、「指導の個別化」と「学習の個性化」という2つの側面がある。
指導の個別化:一人一人の学力や特性に合わせて、子どもが学習内容や学び方を選択し、 基礎・基本となる知識や学び方を身につける学び。
学習の個性化:一人一人の興味・関心や必要性に合わせて、自ら学習を発展させ、探究していく学び。

いままでと何がちがうのか

これまでも「個に応じた指導」に取り組んできたが、それを学習者視点で整理したものが「個別最適な学び」である。「子どもを主語」にして考え、「子どもが学習内容や学習形態を選択する学び」にしていくところが、これまでとのちがいである。

「個別最適な学び」の目的は

「個別最適な学び」は手段であり、その目的は「主体的・対話的で深い学び」の実現である。「主体的・対話的で深い学び」の目的、すなわち「資質・能力を身につけ、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続ける」人を育てることこそ、「個別最適な学び」の目的である。

「個別最適な学び」において大事なことは、問題が解けてよかったというような学力観ではなく、「教科の見方・考え方を働かせて学習をつなげていくこと、そして自分で発展させていくこと」である。

「個別最適な学び」とICT活用の現状

一人一人に合わせたものの提供が求められる現代社会の中で、学校教育についても例外ではない。そこでコンピュータを活用しようとするのだが、全員が同じ活動をする単線型の授業の中でやろうとしても、紙のほうが早いなど、なかなか効果が得られずにいる。

それでも基礎的な知識・技能の個別化・個性化については、デジタル教材や動画などでいろいろな学び方ができるようになってきているが、これから考えていかなければならないのは、思考力・判断力・表現力のような高次な資質・能力の育成を、どう個別化・個性化していくかという点である。

複線型により、個別的かつ協働的な学びへ

個別化・個性化の第一歩として、複数の問題を提示して子どもが自分で選べるようにする。このような複線型の授業において、コンピュータの協働編集の機能を使うと、従来は個別に解決した成果だけしか交流できなかったものが、ほかの子が解決している途中段階も見られるようになる。やり方がわからない子、どう進めていいかがわからない子は、先にできている子の考えを見たり真似したりすることができる。

このような「あかるいカンニング」を認めると、次のようなことが起こる。
・何がわからないのかがわかるようになる。
・そうすると質問ができるようになる。
・そうするとまたわかるようになっていく。

さらに、問題解決の流れ全体を子どもたちに委ねると、次のような多様な学び方が同時発生する。「協働的な学び」も自然に生まれる。
・「個別」でやる子
・「協働」で助け合っている子
・先生から習う子、つまり「一斉」のスタイル

「協働的な学び」というと、従来は一斉協働、すなわち「同期、集合(単線)」というスタイルだったが、これからは、自分が協働的に学びたい子は協働し、個別になりたい子は個別で学ぶというように、「非同期、分散(複線)」のスタイルになっていく。

コンピュータがもたらす変化

子ども一人一人を大切にするという意味では、これまでと変わるものではない。一方、コンピュータを使うことで複線型の授業が可能になり、次のようなこともしやすくなった。
・子ども一人一人の状態が把握しやすくなった。
・子ども一人一人が課題を設定しやすくなった。
・子ども一人一人のペースで学びやすくなった。

初めから個別化・個性化しようと考えるのではなく、まずは子どもの声を聴き、その声に対応していこうとすることが大切である。それを続けていくことにより、徐々に変化が起き始める。


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