実証研究報告

第3回『みらい授業フォーラム』セミナー開催のご報告②

2022年09月22日

演題:『「個別最適な学び」ってなに?』
~ 一斉授業 × 個別学習 × ICT ~

 

2.「個別最適な学び」の実現に向けて

「個別最適な学び」を実現する単元構成の考え方

「個別最適な学び」では、例えば「序盤:一斉 → 中盤:個別 → 終盤:一斉」というように、一斉授業と個別学習を行う授業を分けるとやりやすい。
一斉授業:その後の学習で働かせる知識や見方・考え方、学び方を身につけ、共有する。
個別学習:身につけた知識や見方・考え方を働かせて、新しい知識を創り出す。

個別学習とは、一人でやる学習(孤立学習)のことではない。学習内容や学習形態を子ども自身で選べるようにすることである。初めは先生も子どもも何をやってよいのか戸惑いがあるが、自分で決めていい、興味あることをやっていいとわかってからは、意欲が高まり、子どもの反応が変わる。

個別学習の1時間のつくり方

個別学習を行うときは、1時間を前半と後半に分けるとよい。
前半:教科書などの共通の問題を個別に解く。(指導の個別化)
後半:見方・考え方を使って問題を発展させて、自由に取り組む。(学習の個性化)

前半の場面では、共通の見方・考え方を見いだすことができる問題を扱う。そして、問題を解いて終わりにせず、チャットなどの機能を使って、次のようなことを言語化して書かせるようにする。このとき、自由に投稿させると情報が多くなりすぎるので、先生が投稿情報を実況中継して整理するとよい。
・どうやって考えたのか(論理的な説明)
・どうしてそうしようと思ったのか(発想の源)
・大事な考え方(例えば算数科では、数学的な見方・考え方)
・共通する大切な考え方(統合的な考え方)

後半の場面では、次のような発展のさせ方を伝えておくとよい。
・問題をつくる(数を変える、数の個数を変える、場面を変える)
・きまりを見つける
・気になったことを調べる

「学び方」の指導

「個別最適な学び」を取り入れるということは、個に委ねるということである。したがって、一斉授業の場面などで、意図的・計画的に「学び方」を指導しておく必要がある。この「学び方」の指導をどうするかというところが、ハウツーでは書けないところであり、子どもの実態に応じて先生自身で考えていく必要があるところである。

先生が構造的な板書をするとよく伝わるが、そのときいちばん頭を使っているのは先生であり、わかりやすく整理するという「学び方」を身につける機会を奪っている可能性もある。先生がいなくても学べるような「学び方」を身につけられるようにすることが大切である。

「シンキング・サイクル」を回す

自分で学べるようになるには、「シンキング・サイクル」(基盤となる学習過程)を学ぶ必要がある。そして、調べる・まとめるといった学習過程がわかったところで、調べたりまとめたりするために「シンキング・レンズ」(基盤となる見方・考え方)が必要になる。

思考力・判断力・表現力のような高次な資質・能力は、「シンキング・サイクル」を回すことで育つ。先生は、「学習過程×見方・考え方」を子ども自身で回せるように、単元構成や授業過程を設計していく必要がある。

「シンキング・レンズ」を使う

「シンキング・レンズ」は、「多面的・多角的」「比較」「五感」に整理できる。これらを基本的な見方・考え方として発展させ、駆使していくとよい。

「学び方」の第一歩は、見たり嗅いだり触ったりして、「五感」を働かせることである。「五感」を使って情報を入手すると、「比較」したくなる。「比較」とは、同じこと・似ていること・ちがうことを見つけることである。「比較」すると自然に、似ているものを分類し始める。このように、いちばん汎用的で役に立つものを教えて、それを発展・拡張させて子ども自身で「学び方」を発見できるようにすることが大切である。

30人いると30通りやらないといけないと思ってしまい、教師主導になりがちであるが、「どうしたら子どもが自分で発見できるか」ということを考え、そのための土俵を用意することが教師のやるべきことである。

個別×協働×ICT

個別化・個性化の授業スタイルは、一人一台のコンピュータが入ってきて、特にクラウドサービスにより、学習過程を違和感なく共有できるようになった。「あかるいカンニング」ができるようになった。

個別化・個性化する対象は、学習課題とか学習過程とか学習形態とか学習ペースとかいろいろあるが、その全部を子どもに委ねるのではなく、ひな形やお手本は先生が提示するなど、中間的なものも組み入れながら、できるところからやっていくとよい。

これまでの指導では、問題解決の基礎みたいなものが不足していた。「学び方」を身につけることが重要であり、コンピュータと「学び方」がセットになるとき、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」が実現できるようになる。

型にはめて考えるのではなく、まずはやれる範囲で、単元に1回でも2回でも、45分のうちの10分でも子どもに委ねてみて、自由に学習していいんだよということを知らせて、学びの本当のおもしろさを感じさせられるとよいと思う。


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