実証研究報告

第1回『みらい授業フォーラム』セミナー開催のご報告

2022年02月16日
 
2021年12月4日、『みらい授業フォーラム』の第1回セミナーを開催いたしました。講師に 佐藤 学 先生(東京大学名誉教授)をお迎えして、貴重なお話をたまわりました。
ご参加の皆様、ご支援いただきました方々のおかげをもちまして、盛況のうちに終了することができました。この場を借りて御礼申し上げます。
今回のご講演では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」に向けた授業改善が、なぜ必要なのかを、ICT活用とグローバルな視点からお示しいただきました。以下、ご講演の概要をご報告いたします。

 

演題:『ポストコロナ時代の学びのイノベーション』
- ICT教育の現在と未来 -

佐藤 学 先生(東京大学名誉教授)

新型コロナパンデミックによる社会の激変

新型コロナによって、学校現場でも、この間の学校閉鎖や学びの規制による子どもたちの教育機会は限定されてしまった。不登校も増加している状況。

第4次産業革命によるグローバリゼーションの変化

AIが及ぼす変革で、現在12歳の子どもたちが就く仕事の65%は、今存在しない仕事(現在より知的に高度な仕事)になる。(アクティブ・ラーニングは、もともとこの第4次産業革命への対応の施策であった。)

コンピュータの学校での利用時間と
学力とは逆相関の関係にある。なぜか?
  • (1)現在のコンピュータの使い方が間違っている。
    「教える道具」ではなく「探究と協同の道具」(学びの道具)
  • (2)コンピュータは、深い思考、探究的学習には適していない。
  • (3)コンピュータは、学びを個人化することも要因として考えられる。
では、どのように考えればよいのか?

コンピュータ(タブレット)の最良の使い方は「文房具の一つ」
21世紀型の学び=「探究」と「協同」がキーワード
20世紀型の教師=「教える専門家」一斉授業 → 教師中心の発問と指名と板書
21世紀型の教師=「学びの専門家」学びのデザイナー、協応者、省察者

現代の教師の仕事は三つ
学びのデザイン/学びのコーディネーション/学びのリフレクション
「探究と協同」は「21世紀型の授業と学び」の中心概念
日本の授業と学びの改革は世界と比べて20年遅れ!

「創造性」「探究」「協同」がこれからの学びの中心
一人でも「思考」は実現できるが、「探究」は「協同」でしか実現できない。
「創造性」は、「能力」ではなく、「高次精神機能の可塑性」による「機能」であり、創造性の教育は、「アートの学び」(文学、詩、美術、音楽、演劇、舞踊など)と「批判的思考の学び」(多様な視点による思考)によって実現される。

  • 探究と協同の学びをどうデザインし、どう授業をコーディネートするか
  • ①第一の条件:学びの場と関係をつくる。
  • ②第二の条件:学びをデザインする。(「共有の学び(教科書レベル)」+「ジャンプの学び(教科書以上のレベル)」)
  • ③第三の条件:「探究と協同」を組織する。
  • ④第四の条件:学びをコーディネートする。(聴く、つなぐ、もどす)

 
グループ学習は「話し合い」にしてはいけない。「聴き合い」「学び合い」にしなければいけない。

まとめ
  • ①21世紀型の授業と学びは「探究と協同の学び」にある。日本の授業改革は25年遅れであり、速やかに変革されなければ、子どもの将来も日本社会の将来もない。
  • ②新型コロナの最大の犠牲者は子どもたちである。一人残らず学びの権利を実現し、質の高い学び(探究と協同)を保障しなければならない。
  • ③ICT教育の最大の誤りは、コンピュータを「教える道具」として活用しているところにある。教育においてコンピュータは「学びの道具」(思考と表現の道具:探究と協同の道具」として活用されなければならない。
  • ④第4次産業革命は、「創造性」と「探究」と「協同」の学びを求めている。
  • ⑤ポストコロナの社会は、資源と資産を共有し合う社会、人々が相互に助け合い支え合う社会、未来に向かって学び続ける社会、すなわち sharing, caring and learning community である。この社会に向けて、一人も独りにしない教育で子どもたちを守り育てる必要がある。

 

     佐藤先生 ご著書

今後も、佐藤先生のご講演のように、先生方の‟今”を見つめ直すためのセミナーを開催してまいります。今後とも、『みらい授業フォーラム』の活動をご支援いただきますようお願い申し上げます。


過去のセミナー報告

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